お湯割り研究所

SATSUMA SHUZO

OYUWARI LABO

お湯割りが鹿児島で
愛される理由。

鹿児島大学客員教授鮫島 吉廣

焼酎博士。そんな形容がピッタリなほど
焼酎に詳しい鮫島吉廣先生にお湯割りが美味しい理由を伺ってみました。
深い知識と経験からお湯割りを科学していきます。

お湯割りは、
薄めることではありません。

美味しいお湯割りは、何よりも温度とアルコール度数が大事です。
アルコール度数25度の焼酎を、焼酎6にお湯4で割ると、
アルコール度数は15度程度になります。
これは清酒と同じくらいのアルコール度数で、
日本人にはこれくらいのアルコール度数が合うわけです。
そして温度もちょうど40℃前後になります。
人が甘みを感じるのは35~40℃ですので丁度いい。
さらに温かいと、焼酎の美味しさの成分が引き出されます。
焼酎の99.7%をしめているのは、水とアルコール。
その残りわずか0.3%ほどが味や香りとなる成分で、
これがそれぞれの焼酎の個性をつくります。
これらの成分は、お湯を入れて温度を上げることで溶けてまろやかになります。
お湯割りというのは、アルコール度数を薄めるだけでなく、
美味しく飲むための工夫なのです。

焼酎の一升瓶を振っている人、
見たことありませんか。

焼酎に含まれている味や香りの成分の話の続きですが
今はそんなことはありませんが、昭和40年代以前の焼酎は、
常温ではある成分が溶けきれなくなって少し白濁することがありました。
たまに見かける飲む前に一升瓶を一度振るという行為は、
白濁していた成分を飲む前に混ぜていた昔の飲み方の名残りなのです。
昔は焼酎が臭い、と言われることがありました。
例えば、東京と鹿児島で飲む焼酎は、輸送時にこの成分が酸化、分解してしまい、
味が変わってしまっていたのもひとつの要因でした。
輸送中に日光に触れると酸化、分解して嫌な臭いを出してしまうのです。
今の焼酎が茶瓶なのは、直射日光を避けるきちんとした意味があるのです。

お湯割りが美味しい焼酎は、
どんな飲み方でも美味しい。

最近は、炭酸割りなど焼酎の楽しみ方も広がってきたように思います。
楽しみ方が増えることはいいのですが、
冷やすと芋焼酎本来の香りや味わいはなかなかわかりづらい。
冷たくすると、香りは立ちづらくなるのです。
なので、私はいい焼酎を飲むなら、お湯割りをオススメしたい。
冷たくしていいのは、清酒でいえば吟醸酒のような香りが華やかなものです。
最近は香りが強くフルーティな焼酎も増えてきました。
こういうものは、冷やして飲むのに適しています。
しかし焼酎の美味しさを追求するという意味では、
本来の味が楽しめるお湯割りがベストなのです。
焼酎は温めると良い部分も悪い部分も出てきます。
ですから、私はお湯割りに耐えられる焼酎が、
いちばん美味しい焼酎だと考えています。

お湯割りは、鹿児島の発明です。

米焼酎や泡盛というのは、昔は35度くらいのものを
ストレートで飲むのが普通でした。
お湯割りというのは、薩摩の芋焼酎から生まれた文化です。
それでもいろいろな文献を見ても
明治以前にお湯割りで飲んだという記録はありません。
さつまいもが伝来した後の1700年初頭には芋焼酎は誕生するのですが
お湯で割って飲むという記録が出てくるのは大正時代からなんです。
大正になって、芋焼酎の製造方法が大きく変わるんですね。
明治以前の製法では芋焼酎は20度程度のアルコール度数の低い焼酎しかつくれなかった。
だから薩摩の人はそれくらいの低濃度の焼酎を飲み慣れていたわけですが
大正時代になって製造方法が変わり、アルコール度数の高い芋焼酎が造られるようになった。
そこで、割る。という文化が生まれました。
鹿児島にとっては、焼酎は清酒の役割を担ってきましたので
清酒をお燗して(温めて)飲むように、かわりに鹿児島ではお湯で割って温かくして飲むという習慣が生まれたわけです。
歴史から紐解いても、鹿児島にお湯割り文化が生まれたのは必然だったのかもしれません。

鮫島 吉廣

  • 鹿児島大学客員教授
  • お湯割りが
    美味しい焼酎を
    いつまでも。

    日々焼酎造りに励む杜氏、安藤裕二さんに焼酎のつくり手が考えるお湯割りの美味しさについて語っていただきました。

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  • 奥が深い、
    お湯割りの
    香り。

    香り。という観点から焼酎の美味しさを探求し続ける摩酒造研究開発室室長島田翔吾さんにお湯割りが美味しい理由を伺いました。

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