土のエネルギーが満ちる、結晶。
さつま芋収穫の季節がやっと巡ってきた。
今年はいつもの年よりも待ち遠しかった。
大地の風を感じ、土に触れて、植え付けのお手伝いを
いささかでもさせてもらったせいだろうか。
「掘りたての芋が、残暑の光りでやけどしないようにね。」と、
俵積田さんのやさしさで、収穫は午後4時から始まった。
ハリのある畝からのエネルギーを掌いっぱいに感じながら、
マルチビニールを手際よく剥がしていく。
土から姿を現した美しい黄金千貫(コガネセンガン)には
瑞々しい生命力があり、
「丈夫に育ってくれて、よかった~」と
うれしさが込み上げてきた。
美味い芋焼酎の原料には、
農家の方々が自然と向き合って、芋の呼吸を感じながら
真剣に育てた結晶が欠かせない。
まさに、このさつま芋だろう。
見渡すかぎりの芋畑の上を、赤とんぼが乱舞している。
開聞岳がほど良いアクセントになっていた。
数日後、
白壁がまぶしい明治蔵へ行き、蔵に火が灯る大切な神事
「火入れ式」を拝見させていただく。
神様に今年もおいしい焼酎ができますようにと、
造り手が揃って祈りを捧げる。
凛とした空気に身が引き締まるようだった。
今年の焼酎造りもゆるやかに・・・
そして、リストのピアノ曲「愛の夢」の調べのように、
秘めた情熱を持って動き出す。
Writer : 川崎夏子 ( フルーティスト)