前へ、光りへと進む。
4月に入り、成長した芋苗を見に採苗作業へ行ってみた。
“さいびょう”とは背丈が25cm程になった苗を切り取る作業。
浅緑色が伸びやかに出迎えてくれた。
俵積田さんたちは、一見、軽々と作業をこなしているようだが、
全体をケアするのは結構な重労働。
節のところをカットすると、伸びる順番を待っていた次の芽が
列車のレールを切り替えるように前へ、上へと進んでいく。
「進まんといかんがね~」と、芋苗が常に最高のポテンシャルであるよう努めている。
採苗4~5日後には新たな苗が育ち、平均10回は次々と苗が生まれてくるらしい。なんとも、たくましい母なる種芋だ。
冬の間、土は念入りに空気を入れ替えた。
畑に苗を植える10日前にはウネを作ってマルチビニールで覆っていく作業が続く。この季節、南薩摩のサツマ芋畑ならではの光景が広がり、準備万端、植え付けの時を待つ。
ゴールデンウィーク前の植え付け当日、真新しい赤い長靴を履きワクワクして出かけた。
「今年の苗は寒さに耐えて育ったおかげで、強くて土への活着がいいんだよ」と、俵積田さんたちは素早く苗を植えつけていく。
とにかく速い。
「いつまでそこにしゃがんでるの~!日が暮れるよ」と、
からかわれながら、一番下の節の間に挿し棒をはめて挑戦してみるが、これがなかなか難しい。
苗を折らずに、横に“すーっ”と植えるコツをやっとつかんだ時は
”奇跡の人”へレン・ケラーが「ウォーター!」と声を出し、
物には名前があることを理解した感動の瞬間に似ていた。
植え付けから収穫までは約180日。
見事に育ったサツマ芋畑を、また見に行こう。